サブスクとは?

【入門】現代におけるサブスクとは?事例を交え専門用語も優しく解説

サブスクとは定期定額購入という意味であり2000年代前半から存在してきました。

そして2010年代後半、通信技術が向上するとともにサブスクビジネスは目に見えて発展していきます。

今回はサブスクとはなんなのか、どう発展してきたのかを実例もまじえて優しく解説。

この記事を読めば「現代においてのサブスクとは何か」を理解できます。

最後には音楽サブスクの歴史年表もあるのでぜひ読んでください。

定期購読からサービス利用へ

はじまりは定期購読

サブスク=サブスクリプション(subscription)の略であり、直訳すれば定期購読。

定期購読とは「毎月発刊される雑誌を一年間買い続けます」といった契約です。

契約を交わすと本が毎月自宅に届き、対象物によっては一冊あたりの値段が割安になります。

購入者にとってのメリットは、

  • 発刊日を気にすることがない
  • お店に本を買いに行く必要がない
  • 売り切れによって諦めるもしくはお店をまわる必要がない

また、出版社にとってのメリットは、

  • 売り切れで購入を諦める人が減る
  • 売り上げ予算が立てやすくなる
  • 雑誌とともに広告を送るといったマーケティングが可能になる

つまり購入者、出版社どちらにとっても利点のあるシステムです。

日本では2002年に設立された富士山マガジンサービスが有名です。

このようにサブスクの始まりは「一定期間商品を買い続けます」といった契約でした。

現代においてのサブスク

その後、誰もが同じ値段で同じ対価を受け取れるシステムから大きく進化していきます。

購入するものは商品だけではなくサービスになり、さらにはパーソナライズされます。

具体例を5つ挙げましょう。

①KiNTO

保険・車検・自動車税・メンテナンス費込みの月々定額で車に乗れるサブスク

車種と期間によって値段設定が細かく決められ、面倒な費用を気にしないで済みます。

②マネーフォーワード

ネット上で完結する会計管理システム

いくつかのプラン設定から自分に合うプランを選べます。

③adobe

イラストレーターやフォトショップなどのソフトウェアサブスク

買い切り版から月額課金制に変更したことで機能のアップデートが随時行われ、常に最新の機能が使用できます。

④オイシックス

野菜・フルーツを中心とした宅配サービス

サブスク利用すると、月々3品無料+購入分の野菜類20%OFFになります。

⑤airCloset

月額制ファッションレンタルサービス

スタイリストが利用者の好みに合わせた服を選んで自宅に配送してくれます。

このように対価はモノだけではなく、よりパーソナライズされたサービスです。

そのため現在は広い業界でサブスクビジネスが導入されるようになりました。

現代のサブスクは「パーソナライズされたサービスの利用権を購入すること」と言えます。

サブスクを発展させる通信技術

インターネットが物流を最適化する

モノがインターネットにつながることをIoT(Internet of Things)と呼びます。

サブスクに欠かせない物流はこのIoTによって発展しました。

IoTは以下の3点を可能にします。

  • モノを監視・状況把握する
  • モノ同士で連携する
  • モノを操作する

モノというのは例えば、家電、電子機器、車、センサーなど多種多様です。

仕事の自動化や遠隔操作を行うことで利便性が向上します。

物流の分野では以下のような作業の効率化が可能になります。

  • 商品管理
  • 配送状況確認
  • 倉庫の環境管理

このようなメリットを通して物流の最適化が進みました。

特に物流を必要とするオイシックスやairClosetのようなサブスクはこの恩恵を受けています。

製品を取り扱い物流に関わるサブスクビジネスはIoTによって支えられています。

日本国内におけるIoT市場規模の予測(引用:NRT)

インターネット上で完結するサービス

爆発的にサブスクが広まった要因にSaaS(Software as a Service)があります。

SaaSとは、提供者にあるソフトウェアをインターネット経由で利用する環境のことです。

つまりソフトウェアを自分のPCにインストールせずに利用できます。

SaaSを利用するサブスクのメリットは、

  • 利用者に高度な設備が不要
  • ネットができる環境さえあれば場所を選ばない
  • アップデートがすぐにできる

SaaSの具体例としてはg-mailshopifyCanvaなどがあります。

利用者としては利用を開始しやすく、企業側としては顧客の情報収集がしやすくなります。

製品を必要としないサブスクビジネスとしては必須環境です。

IoTやSaaSがサブスクを可能にする

IoTやSaaSといった通信技術の進歩によってサブスクにもたらされるメリットは、

  • 膨大な顧客情報の管理
  • 物流の最適化
  • 金融取引の最適化
  • サービスの明瞭化
  • 顧客と企業、双方向の通信

日本では2015年Zuora Japan株式会社が設立され、サブスクビジネスを支えるアプリの開発・提供をしています。

サブスクビジネスを支える企業が誕生しているのです。

そのため企業にとってはサブスクビジネスを始めやすく継続可能な環境が整ってきています。

様々なフィールドでサブスクエコノミー(転換)が加速中です。

現代のサブスクはカスタマーサクセスなしには説明不可

サブスクビジネスにとって大切なことは、顧客の継続です。

マーケティングには”1:5の法則”というものがあります。

新規獲得のコストは既存顧客の維持に対して5倍かかるということです。

このことからも継続させるにはかなりの注力が必要だといえます。

カスタマーサクセスは顧客を継続へ導く

企業に「カスタマーサクセス」という部門があります。

これは顧客が利用を継続するための活動を行う部門です。

利用継続のための活動自体を指すこともありますが、ここでは部門として解説していきます。

カスタマーサクセス=顧客の成果+顧客の経験

顧客がどのような状態にあるか、自社の製品やサービスをどのように利用しているかをデータで把握し、積極的に働きかけて、顧客をより良い状態に導く。

サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生むビジネスモデル/ティエン・ツォ

つまり継続に大切なことは顧客の経験と成果であり、それを生み出すのがカスタマーサクセスです。

主な活動は以下の3つです。

  1. 顧客の状態把握
  2. 現状の分析、判断
  3. 具体的な改善行動

各項目についてもう少し掘り下げましょう

1.顧客の状態把握

サブスクを行う企業は顧客の以下のような情報を収集して管理します。

  • 継続期間
  • 使用頻度や時間
  • 使用人数(企業や団体でサービスを使用している場合)
  • マーケティングへのレスポンス(メール開封率、ダウンロード率、配信停止率)
  • カスタマーサポート使用状況

2.現状の分析、判断

企業は収集した情報をもとに顧客が下記のような状態にあると判断します。

  • サービスに満足している
  • サービスを使いこなせていない
  • サービスが不足している
  • サービスが過剰にある
  • 社内の限られた人しか使っていない

3.具体的な改善行動

企業は顧客の状態に適した対策を講じます。

  • アップセル
  • クロスセル
  • ダウンセル
  • セミナー
  • 聞き取り
  • 仕様変更依頼(企業内の他部門への提案、相談)

このようなサイクルを経て、顧客をより良い状態へ導く部門がカスタマーサクセスです。

顧客対応だけでなく、サービス自体に問題があると判断した場合は他部門への働きかけが必要となります。

例えばカスタマーサポート・マーケティング・開発・営業・経営・会計。

そのため企業の全体に通じていることが大切です。

このようなカスタマーサクセスの活動の結果、解約率は下がり収益拡大に繋がっていきます。

カスタマーサクセスを支える顧客関係管理

カスタマーサクセスの過程で大切なことはサービスをパーソナライズさせることです。

パーソナライズは顧客の満足度とサービスへの愛着(ロイヤリティ)を向上させます。

そのために先程のサイクルの積み上げを行います。

  1. 顧客の状態把握
  2. 現状の分析、判断
  3. 具体的な改善行動

↓結果を蓄積↓

分析・予測の精度を上げる

この工程全体をCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)と言います。

セールスフォースオラクルなどCRMを事業として行っている企業もあります。

国内CRM市場は2019年~2024年年間平均成長率5.3%で推移すると予測されるほど成長中です。(IDC調べ)

優秀なCRMツールは顧客の理解、分析、予測の精度を格段に向上させます。

顧客を継続へと導くカスタマーサクセスはこのCRMなしでは機能しないでしょう。

サブスクビジネスが重要視する9つの指標

サブスクビジネスは様々な数字を駆使して、サービスの状態を分析・予測・計画しています。

そんな数字を9つにまとめました。

①LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)

顧客が生涯どれくらいの価値を企業にもたらしてくれるかの指標です。

LTVを知ることでマーケティングなどの予算が立てやすくなります。

おおよそ下記の式より割り出されますが、利益率やコストも換算されることもあります。

LTV = 単価 × 頻度 × 期間

②料金設定(プライシング)

継続されることで収益が発生する値段に設定されていることが多いです。

様々な料金体系を設けることで以下のような特性がでます。

フリーミアム:無料と有料コースを用意することで利用開始のハードルを下げる。

クロスセル:オプションや細かいカテゴリー分けによって、かけ合わせた契約を可能にする。

アップセル:利用頻度やグレードによる料金設定をおこない上位モデルへの乗り換えを可能にする。

③カスタマーヘルス

顧客と企業がどれだけ健康的な関係を築けているかの指標。

顧客情報を収集・分析して、行動を予測し、更新・アップセル・離脱防止等の行動に繋げます。

収集する情報の例

  • 利用頻度
  • 利用時間
  • 利用人数
  • 誰が使っているか
  • カスタマーサポートの利用状況
  • マーケティングへのレスポンス(メール開封率、ダウンロード率、配信停止率)
  • イベントやカンファレンスへの参加状況
  • 契約金の推移
  • どれだけ使いこなせているか

④NPS(Net Promoter Score)

利用者に「自社サービスやプロダクトを知人に勧めたいかどうか」を10点満点で評価してもらう。

10~9点 推薦者

8~7点 中立者

6~1点 批判者

NPSと似ていものに顧客満足度がありますが、これは単純に個人的な満足度です。

対してNPSは個人的な満足度の先にある具体的な行動までイメージさせるので、指標としてより正確です。

点数の低い顧客には改善アクションを起こすきっかけになります。

⑤会員数

分析の目的に応じて会員を分類し、数を把握します。

分析目的例:契約に有効な流入経路の把握、ペルソナの適正、料金設定の妥当性

分類例:コース別、継続年数別、個人データ(年齢、地域、職業など)別、流入経路別

⑥稼働率

利用期間あたりの利用回数であり、どれだけ利用頻度があるかの数字です。

コースや継続年数別に計測することでより細かく分析します。

登録しているが利用していない休眠会員の数も把握できます。

⑦解約率(チャーンレート)

会員数に対する解約者数の割合です。

3%以内が理想的です。

カテゴリー別に分析して改善行動に移します。

⑧CPO(Cost Per Oder:顧客獲得費用)

顧客を獲得するために必要な宣伝・広告などの費用です。

LTVに対してどれだけCPOをかけられるかといった基準にしやすいです。

⑨KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)

最終的な目標までの途中に設定する目標です。

業務に有効な数値を設定して、目標への進捗を計ります。

例えば会員数・稼働率・解約率・継続率がありますが他にも下記のような数値も重要視されています

ARPU(ユーザー平均単価)=月間または年間総収益/会員数

 会員一人当たりの平均支払額

MRR(月次経常収益)=会員数×ARPU(ユーザー平均単価)

 ひと月の売上

ARR(年間経常収益)=MRR(月次経常収益)×12ヶ月

 一年の売上

GEI(成長効率性指標)=営業・マーケティング費/新規獲得ARR

 新しい事業を展開するための支出は経常収益をどれだけ生み出すかの指標。

RPM(定期利益率)= ( ARR – ( 解約損失+ 原価 + 管理費 + 研究開発費 )) / ARR

 収益に対して利益がどのくらいあるかの割合。

音楽サブスクの歴史

音楽サブスクがどう創られてきたかを年表形式にまとめました。

音楽配信、企業の買収についての記述もあります。

カッコ内は企業の所在地

サブスク年表

1999

Napster(アメリカ) ファイル共有サービス

2000

Pandora設立(アメリカ)

2001

Rhapsody(アメリカ) 音楽サブスク開始
RealOne Music(アメリカ:RealNetworks) 音楽サブスク開始
pressplay(アメリカ)音楽サブスク開始
 米Sony Music Entertainmentと仏Universal Music Groupの合併事業

2002

2003

i Tunes store開始(アメリカ:apple)

2004

liveXlive(アメリカ)設立
melOn(韓国:KakaoM)音楽サブスク
ThumbPlay(アメリカ)設立 音楽サブスク
KK Box(台湾)サブスク開始
mora(日本:ソニー・ミュージックエンターテインメント)音楽配信開始

2005

Pandora 音楽サブスク開始
MOG(アメリカ)設立

2006

2007

Bandcamp (アメリカ)音楽ストリーミング・販売
Qobuz(フランス)音楽サブスク開始
SoundCloud(ドイツ)音楽共有SNS開始
Slacker(アメリカ)音楽サブスク開始
Songza(アメリカ)音楽ストリーミング開始
Amazon Music(アメリカ)音楽ストリーミング・販売開始
Deezer(フランス)音楽ストリーミング開始We7(イギリス) 音楽ストリーミング開始

2008

Spotify(スウェーデン) サブスク開始
Mixcloud(イギリス)音楽ストリーミングサービス開始
EimieStreetがsongza買収8tracks(カナダ)音楽ストリーミング開始
Groove shark (アメリカ)ストリーミング開始
Guvera(オーストラリア)設立

2009

MOG(アメリカ) 音楽サブスク開始
Deezer (フランス)サブスク開始

2010

Sony Music Unlimited イギリス・アイルランドでサブスク開始
Rdio(アメリカ)音楽サブスク開始 スカイプ創始者
AmazonがEimieStreet買収 songza名前は残る
Wimp(ノルウェー:Aspiro)音楽サブスク開始
KK Box 日本KDDIの子会社化
Amazon Music(日本)開始We7 音楽サブスクスタート
Guvera(オーストラリア)音楽ストリーミング開始
Simfy ドイツ、オーストリア、スイスで音楽サブスク開始

2011

Rhapsody Napster 合併
iHeartMediaがThumbPlayを買収
Google Play Music(アメリカ)音楽サブスク開始rara(イギリス)開始 音楽サブスク開始

2012

Beats MusicがMOG 買収
dヒッツ(日本)音楽サブスク開始
Sony Music Unlimited 日本でサブスク開始Xbox music(アメリカ:microsoft) 音楽サブスク開始
TescoがWe7買収

2013

レコチョクBest(日本) 音楽サブスク開始
SAMART USEN(日本)音楽配信ネットラジオ開始
Xbox music 日本開始We7からBlinkbox Musicに変更 サブスク終了

2014

Beats Music (アメリカ)音楽サブスク開始
appleがBeat Musicを買収
Tidal (ノルウェー:Aspiro)音楽サブスクスタート
Googleがsongza買収

2015

Joox(中国:Tencent) 音楽サブスクスタート
PlayStation music 開始(Sony Music Unlimitedの後継)
PandoraがRdio買収
Project Panther BidcoがTidal買収
Tidal(Project Panther Bidco)がWimp買収
Amazon Prime Music(アメリカ)音楽サブスク開始
AWA(日本)音楽サブスクスタート
LINE MUSIC(日本)音楽サブスク開始
Apple Music(アメリカ:apple)音楽サブスク開始
Google Play Music 日本開始
YouTube Music(アメリカ)音楽サブスク開始GuveraがBlinkbox Music買収
Xbox musicがGroove Musicに名前変更
rara終了
Simfy終了 Deezerへ誘導
Grooveshark (アメリカ)終了

2016

Tencent Music(中国)設立
Songzaがgoogle play musicに統合 
Amazon Music Unlimited(アメリカ)音楽サブスク開始
Rakuten Music(日本) 音楽サブスク開始
Spotify 日本開始8tracks plus(カナダ)音楽サブスク開始

2017

liveXliveがSlacker買収
ANiUTa(日本)音楽アニソンサブスク開始
Deezer 日本開始groove music 終了 spotifyへ移行
guvera終了

2018

YouTube Music(日本)サブスク開始

2019

レコチョクBestからRecMusicに変更(日本)
mora qualitas(日本)音楽ハイレゾサブスク開始8tracks 終了

2020

Google Play Musicがyoutube musicに統合

まとめ

サブスクはみなさんの暮らしを快適にするためのビジネスモデルです。

もちろんサービスを使ってみないとわからないメリットやデメリットもあります。

そのためサブスクは初めやすく、辞めやすくあるべきといった考えも根付きつつあります。

まずは初めてみて、このサービスは自分のことを理解してくれているか、費用と経験や成果が見合っているかを考えながら使ってみましょう。

生活でちょっと煩わしく感じていることを、サブスクに置き換えることで生活が激変することがありますよ。

この記事によってサブスクを知って、サブスクと上手に付き合うことで、みなさんの生活が明るくなることを願っています。

ABOUT ME
佐藤さん
マイルド サブスク ミュージック編集長